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2013年7月

2013年7月 7日 (日)

宮内氏の「LCCスマホ」という発言に感じる違和感

再生手続きを経て、晴れてSBグループとなった新生WILLCOM。宮内代表は「LCC」という言葉を連呼するが、個人的にはとても違和感を持たざる得ない。

もちろん「LCC」の正しい定義なんてものは何処にもないのかも知れない。航空業界の用語である「LCC」は「Lo Cost Carrier」の略称で有り、利用者からみれば格安で乗れる航空会社であれば、その実態がどうであるかなんて事は関係無いとも言える。

ただ「LCC」の発祥を辿れば、その基本はローコストオペレーションによる低料金化だ。空路で言えば採算の取れやすい路線に集中し、既存の航空会社では当たり前だったサービスも省略し、チケット販売も直販中心にして無駄な手数料をカット。空港での窓口も必要最小限にとどめ、機材を統一化し整備も外注すると言った「徹底した無駄の排除で本当に必要なサービスだけを低料金で消費者に提供する」が基本だと思っている。

そしてかつてのWILLCOM、EMOBILEはコレに近い実践していたわけだ。明らかに採算割れになりそうなルーラルエリアの整備は諦め、対人のサポート窓口は一部販売店に委託、付加サービスも押さえて端末も国際調達(EMOBILE)を基本とするといったローコスト指向だ。良く掲示板などでイーモバイルはエリアも実用範囲だし料金も安い、後はドコモやauなみに直営窓口があれば…なんて書込も散見していたけれど、そうやって同じ土俵で戦ったら料金は上げざる得ない。この世界に魔法はないのだから。

ではSBグループ傘下となった今のWILLCOMやEMOBILEはどうだろう。料金面だけ見れば今でも「LCC」として確かに頑張っているし、キャリアショップも増加の一方。一見すれば良いことづくめに見える。しかしキャリアショップが単なる専売店になってしまっている所も散見されるし、店員の知識が乏しすぎてサポートのサの字も感じられない店舗もある。ドコモやauのキャリアショップだって質の低下は著しいが、まだ一応体をなしてはいる。

宮内氏が「LCCスマホ」と呼ぶ市場に向けた「ウィルコムプランLite」も疑問だ。もちろん1GB/月で2980円というパケット料金はキャリアサービスとしては悪くない選択肢だ。問題はこれを店頭でどう売るかで有って、結局の所不安感を煽って「ウィルコムプランD+」に誘導する可能性もあるし、お得意の実質価格で「ウィルコムプランLite」では端末割引を小さく設定してその存在意義を消し去るかも知れない。話題性を優先するSBMのいつもの手口だ。

もっともSBグループとなった以上、元の姿ではいられないのは仕方ないだろう。航空業界だって国内のでLCCできちんと単独事業者として生き残っているのはスカイマークだけだ。AirDOもSNAも「LCC」として生まれいでたが、今はANAの傘下に近い状態にある。ANAからみれば発着枠を買っているような部分も有り、SBMがWILLCOMやEMOBILEのネットワークを活用したり、契約者数を自社グループの物と換算しているのに似ているし、支援を受けなければ企業として生き残れなかったであろう点もまた同じだ。

いずれにせよ現にWILLCOMは一度破綻したわけだし、EMOBILEもこれから先単独では生き残れなかったと見る向きは多い。航空業界で生き残っているスカイマークはこれまたHISという巨大な後ろ盾あってのものだから、WILLCOMやEMOBILEが同じように生き残れなかった事を非難する事も出来ないだろう。
とはいえ宮内氏が安易に「LCC」という言葉をWILLCOMに当てはめるのは何か違和感というか嫌悪感を感じる。「ウィルコムプランLite」は別にSBM本体でも提供できるのだろうが、それをやると現行のSBMユーザーがそちらに流れてしまうのが嫌なのだろう。まぁリーズナブルな商品を売る時に中身がほとんど同じでもブランドイメージを守るために別ブランドを建てるなんて事は珍しくないので、もちろん目くじらを立てるような事でも無い。

例えば「ウィルコムプランLite」が3GB/月でISP代込みで2980円、キャリアメールも提供しないけれど、なんて内容だったらだいぶ印象は違うかも知れない。3GB/月あれば動画をまれにしか見ない程度のユーザーなら間違いなく月間通信量として収まるという感覚があるからだ。これが1GBだとアプリの自動更新を3Gではしない、程度の配慮は必要になる。1GB/月という通信量は分かっている人には十分だけど、これからスマホに乗り換える層にはかなり微妙じゃ無いかって思う部分があるし、そこにつけ込む商機が残されているねってどうしても思えてしまうのだ。コスト面から言えば1GB/1980円すらXiのMVNOですら実現できてしまうコストなので、キャリアとして別に採算面で無理をしているわけでも無いだろうって見方もある。

SBMにしてみればWILLCOMなんてお荷物しょいこんだけれど、PHSからのMNPの目処も立った事で順次本体にに巻き取っていき、グループトータルのでの契約者数を維持しつつPHSというインフラをゆっくり死に体にしていければ良いわけで、別に「LCC」として生き残らせたい訳でも無い。免許状の問題はあるが、PHSサービスが終了すれば1.9GHz帯の30MHz幅がそのままSBグループに残る可能性もあるわけで、SBM本体としてとっととPHSなんて終わらせてしまえ!が本音だろう。WILLCOMに孫氏の最も信頼たる部下と言われている宮内氏が居るって事はそういう事だと思う。

ま、私が単に「LCC」という言葉に対してチャレンジャーという意識を持ちすぎなのかもしれないって事なんだろうけども。

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