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2013年12月 7日 (土)

LTE時代になぜ無料通話が消えたのか、というお話

LTE時代の料金体系で各キャリア共通の不満に良く上げられるのが、料金プランに無料通話が含まれていない事です。正確に言うと基本料金自体は780~980円と低く抑えられ統一された代わりに、通話料単価が高くさらに無料通話分が含まれていない事でしょう。3G世代では無料通話込みの料金プランが主流で、2年契約なら980円/月に1050円分の無料通話が含まれるなど今風に言うと「基本料金は実質0円」かそれ以下だった訳で、確かにLTE時代の料金体系は音声通話に関して損な気もします。

もっともLTE時代に無料通話を含まないプランに移行したのはそれなりに理由もあると思います。携帯電話の通話料金は元々は接続先を分けて、キャリアの負担別に設定されていました。携帯電話に限らず他事業者が通話先の場合、発信元の事業者が接続料金を支払います。接続料は接続先が固定・携帯の順に安く、距離が近い方が安いのが原則です。これに合わせて通話料金が設定されていましたから、非常に合理的と言えました。

これが3Gの時代に入ると基本料金に一定の通話料金を含んだ、つまり無料料金付の料金プランが主流になり、発信先にかかわらず通話料金は一定になります。確かに利用者からは通話料金も解りやすくもなりましたが、合理的とは言えなくなりました。まぁたんなるどんぶり勘定です。キャリアは発信先に変らず均一の料金を利用者に課しますが、キャリアは他キャリア宛て、固定宛ての順に高い接続料金を払い、キャリア内でも実質設備負担は有るとはいえ、接続料金は発生しません。キャリアからみると固定向けとキャリア内通話が利益の大きな通話という事になります。

例えばドコモがひとりでも割50を導入、バリュープランも導入された2008年度例にとると、ドコモのバリュープラン タイプLではひとりでも割50を適用すると基本料金が4200円で6300円分の無料通話が付属しました(今でも同じ)。無料通話分数は300分です。2008年度のSBMの接続料は区域外(つまり遠距離)で14.4円/分(リンク先PDFです)ですから、300分フルにドコモの利用者がSBMに発信して通話すると、ドコモがSBMに支払う接続料は4320円。完全に真っ赤っかです。実際には接続料金は秒単位での精算に対して利用者からは30秒単位で徴収しますから、接続料だけで赤字にはなる事はそうそうは無かったのでしょう。

もちろん今はSBMの接続料もauとほぼ同じ水準(auの方が高い!)で2012年度の区域外で5.7円/分まで下がっていて、同じ例ならドコモがSBMに支払う接続料金は1710円で済んでいます。それでも自社の設備負担分や管理費用、請求コストまで考慮すると、無料通話を全て他キャリア向けに使われてしまうとキャリアは美味しくないわけです。元々基本料金には各社の膨大な設備維持費用も含まれていて、接続料金だけが音声発信に伴って発生するキャリア側のコストではありません。

ところがLTE時代、ニアイコールでスマホ時代に入るとその心配が現実味を帯びてきます。auとSBMは基本料金だけでキャリア内であれば21~25時を除く時間帯ではキャリア内無料、ドコモもオプションですがキャリア内24時間無料を導入しました。スマホ同士で有ればキャリアを問わず無料通話が可能なLINE、Viber、Skype、iPhoneならば標準機能でFaceTimeなども使えるようになりました。接続料の安い固定向けの通話は減り続け今は発信比率としては20%以下です。つまりキャリア内無料で無料通話込みのプランを提供すると、無料通話分の多くをガラケー利用者を中心にした他キャリア向けに使われておかしくない状況になりつつあるわけです。だからやりたくない、まぁ安易ですがそういう方向性になっているって事です。

かつて無料通話付プランは、キャリアにとって利用者から毎月一定額の収入を得られるという意味で重要でした。通話料金を多少サービスしても収益が読みやすいというメリットが有ったわけです。今はこれがパケット定額料金にすり替わっています。例えばメール中心でちょっとアプリを使ったり、WEBで時々調べ物をする程度でもフラットのパケット定額を契約せざる得ないのが実情で、キャリアもそう誘導できるように2段階定額の料金体系を設定したり、無くしたりしています。さらにいえば携帯電話からの音声通話発信量は以前微増傾向ですが、これは主に固定電話を持たない層が増えたのも理由にされていて、代替手段が今後も増えて行くであろう事を思えば、キャリアが多少料金を優遇した所で利用者はなびいてくれないのも現実でしょう。音声通話利用者の多そうなイメージのあるドコモすら音声ARPUは2013年度Q2(7~9月)ではで既に1430円/月まで下がっていますから、ここをどうにかしようなどとは思わないわけです。スマホ売りつけてデータARPUをつり上げる方がずっと楽ですからね。

最近は話題に上がる事も増えてきたVOLTEに関しても、キャリアはあまり通話料金を弄るつもりは無いでしょう。キャリアが提供する音声通話サービスには一定のサービス品質が定義されていますから、LTEのパケット通信網を使うとは言え無線区間レベルでQoSをしっかり行って提供する必要があります。またデータ通信であれば許容されるようなハンドオーバーに要する時間も音声通話では許容されにくくなりますから、基地局密度もより高める必要もあります。全てがIPベースになりネットワークが単一化されるので現在の3Gネットワークを廃棄するレベルになれば運用コストはぐぐっと下がるかも知れませんが、それまでは3Gネットワークも併用ですからVOLTE導入=即通話料金の値下げには結びつきません。VOLTEの導入はキャリアにとっては音声通話のトラフィックをLTEに移行させ、本格的に3Gネットワークの狭帯域化を進めるための第一ステップでしかないのです。そもそも接続料が存在する以上、自社ネットワーク内だけで低コスト化が進んでもそのまま音声通話料金に反映させる事も難しいわけです。

まぁ利用者としてはキャリア内無料をフル活用し、キャリア外に関しては「楽天でんわ」のような中継タイプやIP電話などを活用するのが正解でしょう。その手間が嫌なら素直にキャリアに高い通話料金を貢げば良いだけです。

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