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2014年6月11日 (水)

完全音声定額という諸刃の剣がもたらすもの

既にドコモがサービスを開始、ソフトバンクが7月から、auも近々に導入を予定しているとされる音声の完全定額制。音声利用が多い人と少ない人で評価が完全に分かれると思うが、色々な点で業界に変化をもたらす可能性は高い。

音声定額というと大抵の人が真っ先にイメージするのはソフトバンクのホワイトプランだろう。iPhoneと共にソフトバンク躍進の起爆剤になったキャリア内定額だ。キャリア内定額は基本的にはシェアの小さいキャリアの方が収益面では有利だ。シェアが小さいほど有料になる他キャリア宛ての発信、着信課金が得られる他キャリアからの着信共に多いわけで、3大キャリアではもっともシェアの小さなソフトバンクだからこそ思い切って始められたサービスとも言える。auはソフトバンクに習う形でキャリア内定額を導入したが、ドコモはXiでオプションという形でしかキャリア内定額は導入しなかった。代わりに24時間無料ではあったが、これはソフトバンクもauもオプションを追加する事でキャリア内24時間無料は追随できたし、一番収益への影響が大きかったのはドコモで有る事に間違いは無いだろう。

一方完全定額になると攻守が逆転する。音声発信側のキャリアが接続料を払わなくて済むキャリア内通話は、当然シェアが大きいほど比率が高くなる。ドコモの「カケホーダイ」に対し、ソフトバンクが音声通話に関しては同等のサービス内容になる「スマ放題」の改訂が遅れたのは、収益性を再検討してた事も要因の一つだと思う。auが沈黙を守っている要因の一つでもあるだろう。実際6月中頃からソフトバンクとauのCBが復活の兆しを見せているのは、ドコモへの流出が多いか自社の純増が少ないか、いずれにせよドコモの「カケホーダイ」の影響を受けての事であるのは恐らく間違いない。

ただ冷静に考えると解るが、どのキャリアにとっても音声の完全定額は諸刃の剣だ。家族内は24時間音声定額というキャリアに縛られる理由が無くなってしまうからだ。ローコールプランで済ませていた人達は基本料金が実質値上げになるからそうも思わないかもしれないが、高齢層だと音声通話中心にコンスタントに3000円程度は携帯料金を払っている人は少なくない。実際私の周りにも、ガラケーを使う祖父祖母と同じキャリアで無いと、という理由でMNPを躊躇っていた家族は少なくない。しかしそのガラケー層が音声完全定額を手にしてしまえば、その他の家族はそれほどキャリアに拘る必要が無くなる。スマホであればLINEでもFacebookでもIPベースの通話は無料だから、スマホを持ち合う家族間ならもうキャリアをそろえておく意味はさほど無い。LINEはそもそも電話番号識別だからキャリアなんて関係無いし、この点は任意のメアドで登録できるFacebookやSkypeも同じ事だ。

だからこそドコモはパケット通信料金を共有する「パケあえる」を一緒に導入したのだろう。もう家族間音声定額でもキャリアメールのアドレスでもスマホユーザーは強く繋ぎ止められない。新しい縛りが必要で有り、それがパケット通信料の共有とディスカウントだ。パケット単価が大きく下がったわけでは無いが、例えばドコモなら10GBを家族4人でシェアすれば1人当たりのパケット通信料金は3000円を程度まで下がる。現実問題1人当たり2.5GBで済む層はかなり多いと思う。キャリアにしてみればパケット定額での収入は減るが、その分は音声の基本料金が上がった事でARPUはどうにか維持できるだろうし、そういう風にプランも巧妙に作ってあるとも言える。

もちろん新料金プランが浸透するまではまだまだ時間が掛かると思うが、ドコモ以外でも現行プランは廃止されるだろうからいずれ移行せざる得なくなる。auもドコモやソフトバンクとそれほど違いは無い料金体系になるだろう。スマートバリューをどう生かすかという所も気にはなるが、ARPUが大きく下がらなければ音声定額でも維持できそうだ。スマートバリューは固定電話を光なりケーブルで契約する事が前提なので、固定側の音声通話の発信が減る事があっても回線契約を失う可能性は低いだろうし、固定回線を維持した方が得なようにauも当然配慮するだろう。最後発なのでこの点は案外困らないのかも知れない。

そして完全音声定額という同じ土俵に3キャリアが立つ事で、改めてエリアカバレッジの評価も再発しそうだ。同じ金額ならエリアが広く音質が良い方が良い。エリアと音質で一歩ぬきんでるのがドコモである事は周知だろうし、さらにVoLTEも導入間近だ。現行音声通話に使われている3Gでは音質面で不利なauが敢えて黙り込んでいるのはVoLTE導入と音声定額を合わせたい可能性も有るし、ソフトバンクはこれらの点に関しては敢えて触れない流れになるだろう。ま、いずれにせよここ数ヶ月の動向と、6末の契約数公表はちょっと楽しみかも知れない。


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